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Archive for 1月 2011

[Review]RED

Posted on: 31/01/2011

red

監督 : ロベルト・シュヴェンケ

出演 : ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ

総合評価 : ★★★☆ 3.5/5

 

 

昨年の「エクスペンダブルズ」に引き続きこの「RED」。最近のハリウッドアクション映画界は高齢化ブーム?とも思えるが、今作はエクスペンダブルズのようにアクション主体ではなく割と情報戦メインといった趣の内容だったのが意外だった。

物語はブルース・ウィリス演じる元CIAの 秘密工作員、フランクの元にある夜彼の命を奪おうとする刺客が送り込まれるところから始まる。フランクは刺客を難なく撃退し、彼の年金担当者であり良き話 し相手でもあった一般人のサラを巻き込んでかつての仲間たち(一部、かつての宿敵も含む)と合流し、自分を襲撃した者たちの正体を暴いていく。
ま ず、とにかくキャストが豪華。「エクスペンダブルズ」とは違い、あんな人がこんな事まで!?という感じの豪華さ。トレーラーの時点で楽しみでたまらなかったヘレン・ミレンがマシンガンを乱射するシーンは痺れるものがあったし、なんといってもマルコヴィッチのクレイジーな演技が最高すぎて何度も声を出して笑ってしまった。MKウルトラ計画によってLSD漬けにされたせいで精神を病み、過度な被害妄想に取り憑かれてしまった男を全く違和感なく演じているのが凄い。手榴弾をああしたりロケットランチャーをこうしたりって、もう笑うしかないでしょ。でもブタちゃん、用事が済んだらあっさり捨てちゃうのね・・・^^;

も ちろんブルースの体を張った格闘アクションも見応えがあったし、モーガン・フリーマンの存在感も相変わらずなのだがやはりインパクトの点ではマルコヴィッチに軍配が上がるのは致し方ない。ストーリーも様々な謎が順を追って明かされてゆく事で、中盤までは引き込まれながら観る事ができた。ただ、ラスト付近の 黒幕の登場が突飛すぎて少々拍子抜け。肝心な所が説明不足で終わってしまったような感じがして残念だった。カール・アーバン演じるウィリアムが最後に取った行動は気持ちよかったけどね。

適度に笑えるアクション・コメディということで内容的には★3つなのだが、ブッサイクなブタちゃんを抱えるマルコヴィッチがシュールすぎたのでちょっとプラス。

監督 : ミシェル・ゴンドリー

出演 : セス・ローゲン、ジェイ・チョウ、キャメロン・ディアス

総合評価 : ★★★☆ 3.5/5

同名のテレビ/ラジオドラマのリメイク作品である本作は、主役が中々決まらなかったりコミコンでの予告編が不評で追加撮影を行ったり、かつてブルース・ リーが演じていたという主人公の相棒カトー役を演じるはずだったチャウ・シンチーが降板したりと本国での公開にこぎ着けるまでは様々な紆余曲折があったという作品。
その甲斐もあり一応公開初週の全米興収は第1位を飾ることができたようだが、まあこのテは日本ではウケないよな〜と思いつつ期待せずに観に行った割には中々楽しかったなあという印象。
しかし今作の3Dに関しては本当に無意味で、途中からあの重たいメガネを外したくて仕方がなかった(XPanD方式のメガネは大嫌いなのだ)。映画業界が不振でちょっとでも3D料金による上乗せ収入に頼りたいのはわかるが、わざわざ3Dにするのならそれ相応の映像は見せてもらいたいものだ。

とはいえこの監督、「僕らのミライへ逆回転」や「エターナル・サンシャイン」などのこれまでの作品とは違い本作は自身初の挑戦となるアクション映画だったわけだが、とてもそうは思えないほどアクションシーンの出来が良い。もちろん演じている俳優(主にカトー役のジェイ・チョウ)の動きが素晴らしいのもあるがスローモーションの使い方やカメラワークが巧みで、思わず見入ってしまった。他のシーンでもなかなか斬新な映像の使い方がされており(特に気に入ったのは悪の親玉が「グリーン・ホーネットを捉えろ」と自分の配下の組織に次々に伝えていくシーン)、映像面ではかなり楽しめた。

ストーリーは金持ちのドラ息子である主人公のブリットが、ある日突然父を亡くし会社を継ぐ羽目になり、そこで出会った父のお抱え運転手&コーヒー係であった謎のアジア人カトーと共に正義に目覚め、悪党のフリをしながら本物の悪党に制裁を加えていく、というありがちな話。
し かしこのブリットとカトーの間の関係が何とも面白いのだ。父への悪口から意気投合した二人だったが、ブリットは発明の天才で格闘の腕も超一流、おまけに絵やピアノまで何でもこなしてしまうという超人カトーに「コーヒー入れてただけの人生で終わりたいのか?」と半ば無理矢理計画に加担させ、そのくせ自分は何 もできないのに偉ぶったり、キャメロン演じる秘書のレノアを取り合って子供のような喧嘩をしたり・・・と、いい年した大人二人のはずなのに見て いてやけに微笑ましいのだ。二人のやりとりが可愛すぎて途中かなりニヤニヤしながら観てしまったので、一人鑑賞だった上に周りにあまり人がいなかった事に 助けられた。「お前は誰でもナンパするくせに、俺の事は口説いてくれないんだな!」ってカトー、可愛すぎ。

カトーはかつてあのブ ルース・リーが演じた役という事もあって、ジェイ・チョウはかなりのプレッシャーを感じていたというが本当に魅力的なキャラクターになっていたと思う。 チョウに関しては全く知らなかったのだが元々は作曲家、歌手であるとの事。劇中でも一瞬歌を口ずさむシーンがあり、美声だな〜と思ったらそういう事か、と 納得。ピアノの腕前も披露しており今回はかなりおいしい役どころだ。
主役のセスもいいとこ無しのダメダメなドラ息子を好演。本当に救いようの無い ダメ人間なのだが、どうにも憎めないピュアさも持ち合わせている不思議なキャラクターだ。そして楽しみの一つだった「イングロリアス・バスターズ」のランダ大佐ことクリストフ・ヴァルツ。やはり悪役が似合う男だなあと思いつつ、イングロリアス〜の背筋が凍るような恐ろしい人物ではなくちょっとコミカルな悪役を演じていて、演技の幅を感じさせられた。

欧米人のアジアごちゃまぜ勘違いに苦笑しつつも、中々ゆる〜い感じのエンターテインメント性で意外な面白さを見せられた作品。そこまでギトギトなアメコミ臭も無かったので好印象だった。3Dやストーリーは置いといてアラサー男子2人のドタバタ友情劇を観に行くような気持ちで是非。

監督 : デヴィッド・フィンチャー

出演 : ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク

総合評価 : ★★★★☆ 4.5/5

 

 

世界中で5億人以上のユーザー数を誇る巨大なSNS「facebook」を創設したマーク・ザッカーバーグの半生をドキュメンタリー調に描いたという本作は、昨年の本国公開後の評判も中々なもので、つい最近のゴールデングローブ作品賞にも選ばれ、次はオスカーか、と囁かれている話題作である。正直予告編の段階では余り心惹かれる所もなく、トレント・レズナーが音楽に携わってるなら、くらいのノリで観に行ったのだが かなり良い意味で予想を裏切られたと言っていいだろう。

物語の主役であるfacebook創始者のマーク・ザッカーバーグを演じたジェシー・アイゼンバーグは、彼女とレストランで話す冒頭のシーンから一般人とは遠くかけ離れた所に存在する「天才」ぶりを見事に表現しきっている。そこだけでなく物語全編においてとにかく早口で人の話を聞かない、おまけに話のネタがあちらこちらへと飛んで行くといった、一目見ただけで「ああ、この人は普通の人間とは違う時間軸の中で生きてるんだな」と感じさせるような演技。好き嫌いは置いておいてとにかく引きずり込まれた。
彼女にフラれたマークはその腹いせに、2人の女学生の写真を並べてどちらが可愛いかを投票するサイトを立ち上げる。当然の如く全女生徒からは総スカンの嵐、 学校側からも観察処分を受けた彼だったが、彼と同じハーバード大に通うとある双子がサーバーダウンを起こす程のアクセス数を短時間で叩き出した彼の実力 に目をつけ、一緒にサイトを立ち上げないかと話を持ちかける。
しかしマークは双子の話に乗ったフリをしながら、彼らのアイデアを元に親友のエドゥア ルドを誘い全く別のサイト「ザ・フェイスブック」を立ち上げてしまう。当然の如く双子は激怒。更に「ザ・フェイスブック」が巨大化していくにつれ、マークとエドゥアルドの間には考え方の違いから少しずつ亀裂が生まれていく。そしてそこにナップスターの創始者であるショーン・パーカーが介入して行くことによって、その亀裂は更に深みを増していってしまう。

映画はFacebookの創設からいかにして巨大化していったかの過程と、マークが後に経験することになる2つの訴訟のパートが重なり合いながら進んで行く。正直双子の方はどうでもいいのだが、かつての親友であるエドゥアルドと机を挟んで向かい合う様子は、何とも切ない。
この映画は、SNSという近代的なツールを題材にしながらも、極めて普遍的な人間関係を描いたヒューマン・ドラマでもあった。友情、信頼関係、そこに利益が介入してきた時の脆さ・・・。マークとエドゥアルド、かつて親友だったはずの彼らの間には今、何が残っているのだろうか。

かくして、マークはfacebook の成功によって莫大な資産を手に入れた。しかし利益に興味の無いマークにとってそれが一体何だったというのか。この映画のCMでは「五億人の友人は、失うものなくして作れない」とあったが、得たモノは彼にとって無価値の物、結局彼は失っただけなのだ。ラストシーン、きっと永遠に押されることのない「承認」ボタンのクリックを待ち続ける彼の姿に、デビッド・フィンチャー監督からの痛烈な皮肉が込められているように思えた。

ここ数年で急激に普及したSNS。facebook以外にも日本ではmixi 等色々とあるが、それによって人と人との繋がりが可視化し、直接話したこともない人の情報まで見えてしまい、その人のことがわかった気になってしまう。携 帯電話の普及から始まって人と人との繋がりは現在こんなにも変化してきている。それは果たして幸せなことなのだろうか?そんな事を考えさせられる作品だっ た。