Strategy of…

Archive for 6月 2011

 

監督 : ダニー・ボイル

出演 : ジェームズ・フランコ、アンバー・タンブリン、ケイト・マーラ

総合評価 : ★★★★☆ 4.5/5

 

 

 

「トレインスポッティング」や「スラムドッグ$ミリオネア」で知られる奇才ダニーボイルの最新作は、実在する登山家アーロン・ラルストンの体験を元にしたノンフィクション風ムービー。
孤独を愛し、家族とさえも碌に連絡を取らない男アーロンは週末になると決まったように一人旅を楽しんでいた。その日もいつものように誰にも行き先を告げず赴いた旅先で、不運にも落ちて来た岩に右腕を挟まれ動けなくなってしまう。
人一人通らない雄大な自然の中、叫び声は誰の元にも届かない。手元にあるのはわずかな食料と水にビデオカメラ、大した役に立たない道具数点のみ。ここで漸くスクリーンに現れる「127Hours」というタイトルが実に効果的だ。絶望的なカウントダウンが始まったのである。

94分と言う短尺ではあるが1秒も画面から目を逸らせない程引き込まれる展開。さすがこの監督は映像も音楽も隅々まで格好良い。そして「スラムドッグ〜」とも通じる、美しくはなくとも生々しい「生」の描写。生死を分ける鍵となる「水」を執拗なまでに映していたのが印象的だ。
冒頭では都会を生きる群衆の映像が次々に映し出される。その時はその意味に気付かないが、やがて物語が進むにつれてその映像に込められた皮肉とも取れるメッセージに気付いてくる。世の中はこんなにも人で溢れているのに、こんなにも自分以外の誰かを必要としている時にお前はなぜ一人なのか?と。

人は死の淵に立つと今までの人生が走馬灯のように駆け巡るというが、彼もまたそうだった。
幻覚のように目の前に現れる自分の過去の行い。その一つ一つがこの岩の狭間に繋がっていたのだと後悔し、とうとう生への執着を捨てようとした時に見えた最後の映像の中にいたのは、過去の自分ではなかった。
そこから彼はわずかに残った力を振り絞ってある行動に出る。正直に言って辛い映像ではあるが、彼が自分に言い聞かせる台詞は我々観客に向けてのものでもあったのだろう。「目を逸らすな、これが生きるということだ」。

アーロンが味わった苦しみや痛みがどれ程のものだったのかは、映像をただ見ることしかできない観客にはわからない。それでも大自然の持つ美しさと恐ろしさや生きることの大切さ、人との繋がり方などたくさんのメッセージを投げかけてくる作品。きっと見た人誰もが過去を振り返り、未来をどう生きていくか考えるきっかけとなるだろう。ジェームズ・フランコの迫真の演技にもただただ敬服としか言いようが無い。文句無しの傑作だ。

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監督 : ローラン・ティラール

出演 : マキシム・ゴダール、ヴァレリー・ルメルシェ、カド・メラッド

総合評価 : ★★★★ 4.0/5

 

 

 
フランスの国民的絵本「プチ・ニコラ」を実写化したという本作。
原作の絵本自体は読んだことがないのだが、全体的に会話のテンポや展開がなんとも言えないシュールさで、どういった雰囲気の絵本なのか想像しながら観れるのが楽しい作品。
落ちこぼれくん、先生に媚ばっかり売ってるやつ、ガキ大将、超怖い生活指導の先生・・・と、主人公のニコラの周りには自分の子供時代を思い出しながら「ああ、いたいた!」と誰もが思うような個性豊かなキャラクターたちは「スヌーピー」や「ちびまる子ちゃん」を彷彿とさせる。子供たちの世界って万国共通だなあ。
そして主人公のニコラはというと、特にこれといった特徴もないわりと普通な男の子。女の子がちょっと苦手。将来のことはわからないけど、とりあえず楽しい今がずっと続いてくれたらな、と願っている。

ある日、ニコラと同じクラスのある男の子が沈んだ顔で学校にやってきた。話を聞くと、どうやら弟ができたらしい。その子が言うには「最近やたらとパパとママの仲が良かったから変だと思ったんだ!ママは僕のことなんて放っておいて弟にべったりだし、もう僕は捨てられるのかも・・・」。
そしてその後その子は学校に来なくなってしまった。子供たちの世界では大変な事件である。さらに、その話を聞いたあとニコラが家に帰ると普段は喧嘩ばかりしている両親が妙にベタベタしているではないか・・・。
「僕も捨てられちゃうの!?」そう思ったニコラはクラスメイトたちを巻き込んで様々な騒動を起こしてしまう。そんなニコラたちの思惑など知らずパパとママも一大事。色んなドタバタがありつつも最後には心温まるエンディングへ・・といったストーリー。

とにかく出てくるキャラクター全員が可愛くて愛しくて、見ているだけで幸せになれる作品だ。内容も大人から子供まで楽しめるようになっているし、ちょっとシュールな笑いの要素も心地良い。フランスでの評判はわからないが、これくらい高いレベルで実写化してくれるのならきっと文句もないのだろうな、と思う。最近日本でも漫画や小説などやたらと実写化されているが見習って欲しいものだ。
みんな可愛いのだがやっぱり主人公のニコラは格段に可愛い。映画も絵本もひっくるめてこの「ニコラ」というキャラが愛される理由、それがエンディングの一言でわかったような気がした。
機会があれば原作の絵本も是非読んでみたいと思った作品。ほっこりしたい時におすすめ。

監督 : マシュー・ヴォーン

出演 : ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ケヴィン・ベーコン

総合評価 : ★★★★☆ 4.5/5

 

人気シリーズ「X-MEN」の「ウルヴァリン X-MEN ZERO」に続くスピンオフ2作目。
本国ではデビュー週の売り上げがシリーズで下から2番目というスロースタートだったという今作だが、公開後の評判は上々のようでこれから伸びて行くのではないかな?と思わせる手堅い出来だった。

物語の核となるのは後に善と悪のミュータント代表となり対立するプロフェッサーX(チャールズ)とマグニートー(エリック)との出会い、友情の芽生え、そして別離までの過程。ちなみにウルヴァリンも含めてシリーズ作品は全て未見のため、間違っている点があったらスミマセン。
「縞模様のシャツ」でお察し下さいといった風に始まるオープニングから語られるのはエリックの辛く悲しい過去。続いて描かれるチャールズと青い肌のミュータント「ミスティーク」との出会い。
思えば既にこの時、彼らが決して相容れないことは決まっていたのかもしれないと考えると、何とも切ない気持ちにさせられる。
エ リックは自らの力の覚醒と引き換えに母親を殺害した男「ショウ」に復讐するため、ついに彼らのいる船に乗り込む。しかし存在すると思ってもいなかった自分以外の超能力者に返り討ちにされ、逃げるショウ一味を自らの命も顧みず追いかけるエリック。そんな彼を止め命を救ったのがチャールズであり、その後彼らは堅い友情で結ばれることになる。

そしてこの作品は実際に起こった「キューバ危機」をストーリーに上手く取り入れている。同じ様な時代背景として「ウォッチメン」を思い出したりもしたが、今作もなかなか。
1960年代前半、緊張状態にあったソ連と米国。米国がトルコにミサイルを配置してソ連を牽制していたのに対抗してソ連に介入し、キューバにミサイルを配置することでアメリカとソ連の戦争開始を望んだショウ。
それに対して、CIAと協力し戦争を止めようとするチャールズ、そしてショウに復讐を企むエリック・・・。動機と目的は一致せずとも、彼らはミスティークら若いミュータントたちと共にいつか訪れる対峙の時に備えていた・・・。

監督は「キック・アス」のマシュー・ヴォーン。前作同様、本当にストーリーの進め方、テンポが素晴らしく、全く飽きさせない展開作り。緊張感を与える低音が響く音楽も良かった。
キャスト陣も大満足。主演のジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダーは安定した演技力で楽しませてくれたし、悪役のケビン・ベーコンも抜群の安定感。あとジャニュアリージョーンズ超きれー。あと気付かなかったけどジェイソン・フレミングがアザゼルだったとは。珍しくアクションやってましたね、キックアスでは不憫なドアマンだったのに。笑
ベテランのメインキャスト陣に対して彼らの仲間となるミュータント達には初々しいキャストが並ぶ。シングルマン以来のニコラス・ホルトは新境地となるハンク役。アレックスとバンシーを演じた2人が可愛かったのでチェック。

ミュータントと人間の対立——これは現実世界において人間同士にも当てはまる、普遍的なテーマでもある。いわゆるマイノリティと呼ばれる人々にどう接するのか。そういったテーマも織り交ぜながら、人間ドラマとアクションをバランス良く織り交ぜた見事な脚本。
チャールズが譲れないもの、エリックが譲れないもの。お互いに信頼しあい、そこに憎しみなどなくてもどうしても一緒の道を歩くことはできなかった2人。ただの善悪の二元論に落とし込まなかった「アメコミらしからぬ」所が素晴らしいと感じた。いよいよ本物だなあ、マシュー・ヴォーン。
これを機にX-MENシリーズの過去作も観てみようと思った。ただなんとなく今作が最高傑作な気は既にしている。笑

監督 : フランソワ・オゾン

出演 : メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ

総合評価 : ★★★★ 4.0/5

 

 

原題「Time to leave」で邦題が「ぼくを葬る」、良いセンスだなあ〜。
というわけでタイトルに惹かれ観てみた作品。
観はじめてからフランス映画ということを知り、あまりフランス映画にいいイメージを持たない私は「うわ〜失敗したかな」と思ってしまったのだが、観終わった今となってはそれを謝りたいくらい静かに心に響く良作だった。

メルヴィル・プポー(超イケメン)演じる主人公のロマンはカメラマンを生業とする同性愛者の青年で、ある日いつものように屋外での撮影をこなしている最中に急に倒れてしまう。
医者の診断によると体内の複数の場所に腫瘍が見られるとのこと、切除はできず、化学療法を受けても治る可能性はは非常に低い。もしこのまま何もしなければ余命はおそらく3ヶ月くらいだろうと告げられる。
普通に暮らしてきた中でいきなりそんな信じ難い現実を突きつけられた彼は、普段からあまり仲が良いとは言えなかった姉に八つ当たりして関係を更に悪化させてしまったり、同居していた恋人に真実を告げることができず乱暴に別れを告げてしまったりと、どんどん孤独の中に身を置くようになってしまう。
しかし、自分の身に起こったことを家族にも言えない中で唯一全てを打ち明けた祖母とのやりとりと、ある喫茶店で出会った女性からの「頼み事」、そして不意に届いた姉からの一通の手紙が孤独なまま死を迎えようとしていた彼を変えてゆくきっかけとなる。

全編にわたりとにかく映像が美しい。撮り方ももちろん、出演者も美形揃いでなんとも目の保養になる映画である。死に向かう彼に語りかけてくるのは過去の美しい思い出たち。そんな中で彼が時折、彼が生きている「いま」を切り取るようにシャッターを押すシーンが印象的だ。
残された側の人たちではなく、これを「彼」の物語とするならばきっとこれは理想的な死のかたちなのだろうな、と感じた。

美しく切ない作品ではあるのだが割とがっつり同性でのセックスシーンが入ったりしているので、そういったものに抵抗がある方は見ない方が良いかも。そうでない方には本編時間90分以下という短い尺の中に濃厚な生と死のドラマが描かれている良作なので是非おすすめしたい。