Strategy of…

 

監督 : ウディ・アレン

出演 : オーウェン・ウィルソン、レイチェル・マクアダムス、マリオン・コティヤール

総合評価 : ★★★★★ 5.0/5

 

 

 
今まで数々の作品を世に送り出してきたウディ・アレン監督の、キャリア最大のヒット作となった今作。
全米わずか6館のみの公開から口コミでじわじわと公開館数を増やしていき、ロングヒットを記録。
今年度のアカデミー賞ゴールデングローブ賞の両方で脚本賞を受賞しています。

 
 

海外での公開当時からずっと気になっていた今作、日本公開は今年の5月末に決定したようですが、どうしても早く観たかったので海外版ブルーレイで鑑賞。
もう既に今年のベスト作品決定と言ってしまっていいほどに素敵な、愛おしい作品でした。

 
 

主人公のギル(オーウェン・ウィルソン)は若き日のウディ・アレン自身を投影して描かれたキャラクター。彼は婚約者のイネズ(レイチェル・マクアダムス)と彼女の両親と共に芸術の街パリを訪れます。
数多くの小説家や画家たちが活躍した1920年代のパリに執心で、ハリウッドでの脚本の仕事よりもパリに住んで小説を書いていたいと願うギル。対してパリは観光とショッピングの街、アメリカ以外で暮らす気はないという価値観のイネズや両親。偶然から行動を共にすることになったイネズの友人カップルともそりが合わず、ギルはダンスパーティーに行くというイネズと離れて一人深夜のパリを歩くことに。ホテルへの帰り道がわからず、途方に暮れるギル。そこに12時の鐘が鳴り響きーー。

 

 

本編時間は94分と短めですが、オープニングから贅沢な時間の使い方をしているなあと思いました。
パリという街をあらゆる角度から、時間の経過と共に映し出していく演出。誰もがパリに行きたい!と感じるはずです。
今作は文句の付けどころが全く見つからないくらい、脚本、演出、キャスト、音楽…とあらゆる面において素晴らしいクオリティなのですが、特に撮影に関しては賞賛に値するレベルです。映像をただ眺めているだけでも満足感が得られます。

 

 

12時の鐘が鳴り響くと同時に、魔法にかけられる主人公。
そして観ている観客もまた、彼と同じように素敵な魔法の世界の中に誘われます。
それがどんな魔法かは、是非スクリーンで確かめてください。
最高に幸せで、胸が高鳴る世界がきっとあなたを待っています。

 

 
ラブストーリーであり、ファンタジーであり、ちょっと皮肉のきいたコメディでもあり。
日本で公開されたら、何度も魔法にかかりに足を運んでしまいそうです。

 

 
人気ブログランキングへ ←よろしければクリックお願いします。

Real Steel
 

監督 : ショーン・レヴィ

出演 : ヒュー・ジャックマン、ダコタ・ゴヨ、エヴァンジェリン・ジェリー

総合評価 : ★★★★☆ 4.5/5

 
 
 
最近はあまりレビューが書けない日々が続いていますが、そろそろ2011年も終わりに近づいてきたこともあり年間ベストの選出のためにも最近観た作品を思い出しつつ書きたいと思います。
というわけで「リアル・スティール」。すごく良かったです。大好き。
ここにきて年間ベスト級の作品に出会えるとは思っていませんでした。傑作だと思います。

 
 

舞台は現代からそう遠くない近未来のアメリカ。人々は人間同士の格闘技に飽き飽きし、より暴力的で激しいロボット同士の格闘技が行われるようになった世界。
元ボクサーのチャーリー(ヒュー・ジャックマン)はかつて夢に破れた自分自身をロボットに重ね合わせるように、日々ロボット格闘技に没頭していたが、思うような結果を残せず借金まみれの泥沼状態。ある日かつて自分を倒した相手でもあるリッキーとの賭けに負け、更なる借金を負ってしまったところに現れた2人組の男たち。しかし彼らがチャーリーに告げたのは、生まれてから一度も顔を見たこともない息子の話だった…。

 
 

ストーリーの流れはほとんど予告編の通りではあるのですが、あらゆるシーンにおいて盛り上げ方がとても巧みなのでお話の流れがわかっていても期待以上の満足感が得られる仕上がりになっています。
ショーン・レヴィ監督作品はナイト・ミュージアムくらいしか観たことが無いのですが「映画」という枠の中での魅せ方が非常に上手いなあと。ヒュー・ジャックマン演じるチャーリーは本当にびっくりするくらいクズなので、映画と現実世界をリンクさせてしまいがちな人にとってはあまり気持ちのいいものではないかもしれませんが、フィクションと考えるとあのキャラクターは素晴らしいと思います。子供に対して「お前はまだガキだからわかんねえだろ!」みたいなこといってキレるんだよ。クズすぎてびっくりしたよ…。

 
 

子役のダコタ・ゴヨ演じる息子のマックスはチャーリーよりずっと大人なんだけど、それでも年相応なところもあってあざとくなっていない。かわいかったなあ。あの位の年齢の頃にあんなロボットが身近にいたらもう楽しくて仕方ないんだろうなあ、そういう気持ちがこっちにちゃんと伝わってくる演技をするんですよねこの子は。末恐ろしいです。
この映画は父と息子の親子ものでありながら息子ではなく父親の成長物語なんですよね。かつて持っていたはずの情熱や生き様を、ATOMというロボットを通じて息子に教えられる父親の物語。ベタでありきたりなストーリーではありますがとても丁寧に描かれていてやっぱり感動させられてしまった。最後の方にはATOMとマックスがどんどんリンクしてきて、顔まで似てきたような錯覚に陥っちゃいました。

 
 

ロボット同士の戦いは、人間同士ではできない領域まで入り込んでるということで見方によってはわりとグロい。腕が取れて液体(オイル?)がドボドボーって。グロい。グロいけど、バトルシーンの見せ方もまた上手いので、思わず立ち上がりたくなるくらい興奮します。あと、ラストバトルに対しての伏線かと思わせておいてあえて回収しないってところとか、スパっとしたエンディングとか、色んな所が好みだったなー。あの後どうなるかを描いちゃうのは蛇足にしかならないと思うので、終わり方はあれで正解だったと思います。

 

 
元気をもらえる映画、まだご覧になっていない方は年末の一本に是非。

 

 
人気ブログランキングへ ←よろしければクリックお願いします。

監督 : ターセム・シン・ダンドワール

出演 : ヘンリー・カヴィル、ミッキー・ローク、ルーク・エヴァンス

総合評価 : ★☆ 1.5/5

 

 

 
ギリシャ神話の世界を舞台に、あの「300」のスタッフが再び集結して制作したという今作「インモータルズ」。2D字幕版で観ました。
トレーラーで流れたアクションシーンやポスターのビジュアルから”いい意味で”悪趣味な画作りを期待して観に行ってきましたが…残念ながら本来の意味で悪趣味な作品に仕上がってしまっていたという印象です。
ターセム監督には悪いのですが「300」のスタッフに加え主演がザックの次回作「マン・オブ・スティール」でスーパーマンを演じるヘンリー・カヴィルときたら、「もういっそザックが撮ってくれればよかったのに…!」と思わずにはいられないです。

 

 
まずタイトルからして偽りありで、神々の戦いはほんの一部だけでほぼ人間同士の戦いです。その上インモータルズ(=不滅のもの)と言っておきながら不死の存在なんて一人も出てきません。
ミッキー・ローク演じる邪悪な王ハイペリオンはギリシアを滅ぼすため、かつて神々同士の戦いに破れ幽閉されている闇の神タイタン族を解き放とうとするのですが、まずハイペリオンの行動の動機付けが弱すぎるので何してるんだろうこの人…状態です。もっと過去を掘り下げればぐっと深みが出たんじゃないかなあ。
というかお話全体にわたって何が物語の軸になっているのかがまったくわからないため、終始ふわっふわした軽~い感じになってしまってるのですね。テンポがよろしくない。闇の神を復活させるのには伝説の弓が必要だぞー!弓だー!弓だー!って言ってたのに途中から結構弓の扱い雑になっていっちゃうし、弓を見つけるには未来が見える巫女の力が必要だー!巫女だー!巫女探せー!とか言っても巫女もどうでもよくなっちゃうし、あんなに闇の神闇の神言ってたのにその闇の神ですら最終的にはかなりぞんざいな扱いを受けてたので椅子からずり落ちるかと思いました。あんなに引っ張ったのにね。これコメディなの?って疑うレベル。
とにかく至る所で伏線の張り方が雑すぎて、というか回収する気ないならバッサリ切り捨てて他のシーンに時間裂けばいいのにさ…。あと弓の隠し場所も、さすがにそりゃねーだろ!!と。

 

 
きんきらきんの悪趣味衣装を身にまとったギリシャ神話の神々たちは「闇の神が復活するまでは僕らなんもしません。人間同士で頑張って」という割といつも通りのスタンスです。たまに人間たちがピンチに陥ると約束を破って助けにきてくれたりしますが、ゼウスさんに見つかって怒られます。なぜか人間も「もう助けないからお前らだけでしっかりやれよな!!まったくもう!!」って怒られます。えええそっちが勝手に来ただけなのになんで僕たちまで怒られなきゃいけないの…?
今回ゼウスさんはわりと気が狂っていらっしゃった。とりあえずアレスには謝らないといけませんよ。あとアポロの「早くしろよ!!」は笑う所ですよね?

 

 
頑張って褒めるところを挙げるとすれば、物語の終盤になってやっと見ることができる神VS神の戦いのシーンの撮り方は良かったですよ。スローが効果的だったしスタイリッシュで格好よかったです。ただ「300」ほどのインパクトは無かった上に、神々と比較するためなのか人間同士のアクションシーンは非常に平坦な撮り方しかされてなくてですね、アクションの魅せ方に大いに期待していた分残念な印象の方が強く残ってしまいました。

 

 
ターセム監督の過去作「ザ・セル」「落下の王国」はどちらも未見なのですが、あんまり大作向きの監督さんじゃないのかな。演出の一つ一つがなんかもう、悪いけどダサいです。「とりあえず!」「音!」「どーーーーん!!」「ばーーーーん!」みたいな、効果音が結構邪魔なのね…。あと台詞が説明過多すぎて萎える。R15なのでグロ要素はまあわりと、しかしグロには興味もないし詳しくもないのであまり言及しないことにします。
映像面でもそれほど新しいと思えなかったし、画面の色味とかもシーンごとにけっこうバラバラなので観ていてもやもやしました。このあたりも「300」のあの計算され尽くした映像美には遠く及びませんでしたね。
あと日本人の方が担当してるという衣装、斬新と言えば斬新なのかもしれないけど、どう見てもハイペリオンのアレはバルタン星人です。

 

 
色々文句ばっかり書いてしまっていますが、キャスト陣は総じて良かったです。特に主演テセウス役のヘンリー・カヴィルは精悍で凛々しくて男前でね、人間の役なのに一番人間離れした格好良さでしたよ。これは新スーパーマンへの期待が高まります。彼が戦いの前にギリシャ兵たちを鼓舞するシーンには胸が熱くなりました。
テセウスと共に旅するスタブロス役のスティーブン・ドーフも初見でしたが男前ですねー。ミッキー・ロークも好演していたしヒロインも魅力的でした。演技がみんなよかったのでキャラクターの掘り下げとかがもうちょっとあればよかったのに…。
あ、我らがルーク・エヴァンスは前に述べた通り頭のおかしいだけの神様でしたが、相変わらずのイケメン具合でした。全能のイケメン。もうそれだけでいいです。はい。ゼウスさんが唯一がんばるシーンでの(>△<)って表情がかわいいよ。

 

 
といった具合で、ザック信者なわたしにとっては終始もやもやとした印象しか残らないし、「300」云々を抜きにしてもお世辞にも上出来とは言えない作品でした。ただ誤解しないで頂きたいのは、いくらスタッフが同じと言ってもそもそもザックが撮ってない時点で「300」とは完全に別物なのは明らかなのではじめからザックテイストを求めて観に行ったわけではないのですよ。むしろザック以外の監督ならある意味でもっと「まっとうな」作品に仕上がってるんじゃないか(失礼)くらいの気持ちで行ったんですけど、蓋を開けてみたらターセム監督も別の方向にぶっ飛んでる監督だったようで。それがたまたま私の好みと全く合わなかったということです。感性の相性って大事なんだなあ…。
兎にも角にも「300」と無理やり関連づけて売るっていう宣伝手法は誰も得しないと思うのでやめて頂きたかったですね…。

 

 

人気ブログランキングへ ←よろしければクリックお願いします。