Strategy of…

Archive for 8月 2011

監督 : バンクシー

出演 : ティエリー・グエッタ、バンクシー、シェパード・フェアリー

総合評価 : ★★★★☆ 4.5/5
 

 

 
面白かったです。
個人的にはドキュメンタリー映画ってあまり好きじゃないんですが、それでもこれはドキュメンタリーっぽさが良い意味で薄いというか、構成がすごく巧みなので観ていて引き込まれました。
逆にそういった点から、実はドキュメンタリーでなくヤラセなんじゃないかとか、フィクションが交じってるんじゃないかとか色々言われているようですが、これについては後述します。
 

監督はバンクシー。有名なストリート・アーティストです。
素顔を表に出さず、非常に社会的なメッセージを含んだ作品で世界的に評価を受けている人物です。私は余りストリート・アート界に詳しくないので、作品をいくつか知っている程度でした。これは彼についてのドキュメンタリーではないので、彼をよく知らない人でも楽しめると思います。
では誰についての映画かというと、ロスで古着屋を営んでいたティエリー・グエッタという人物です。彼は仕事の傍ら、取り憑かれたようにビデオカメラを回すのが癖でした。「撮る事」自体が目的であり、撮った物をどうこうしようという気はまったくありません。
ある日自分の従兄弟であるスペース・インベーダーのアートを撮り始めたことから、様々なストリート・アーティストの作品や作業工程などを撮影していくことになります。その中でやがてティエリーとバンクシーが出会い、ある事件をきっかけに2人はとても親密な関係になります。
 

公共の場に描くストリート・アートは言うまでもなく非合法であり、描いてもすぐに消されてしまう物が殆どです。バンクシーは「じゃあ映像で残しておくのも悪くないかも」と思い、ティエリーに撮りためたビデオを編集して映画にして欲しいと頼みます。しかし半年後ティエリーから送られてきた映像は…。ここは本当に爆笑でした。あんなの90分も延々と見せられたら、そりゃあバンクシーじゃなくてもぐったりします。彼は映像を作るべき人じゃない、と気づいたバンクシーは「映像はもういいから君もアートをやったら?」と勧めます。しかし、残念ながら彼はアートをやるべき人間でもありませんでした。
 

ストリート・アートという非合法的なモノが、それでもアートとして認められるに至ったその背景には、バンクシーはじめ様々なアーティスト達がそれぞれ持つ信念や伝えたいメッセージが存在している。言い換えてみればアートは目的ではなく手段に過ぎないんです。
しかし世の中にはそういったモノが無い、いわばスッカスカな作品でも商業的に成功してしまう例も非常に多く存在していて、MBW(ミスター・ブレインウォッシュ)はまさにその一人です。他のアーティスト達の作品の上澄みだけを頂いてスタッフに作らせた薄っぺらい作品の数々。普通だったら何の価値もないシロモノです。彼には信念なんて無いのでアートというものが手段ではなくなってしまってるんですね。商品としての価値しか求めていない。しかし、彼はバンクシーと近しい自分の立場を最大限に利用して、更にそこからメディアまでも利用して一気にのし上がってしまうのです。彼が名乗ったブレインウォッシュ(=洗脳)という名前は、そう言う意味ですごく的を射ていますね。
 

これはストリート・アート界のみならず、音楽業界など他の分野にも言えると思います。「メディアが取り上げてるから」「周りで人気だから」といった理由で、ろくに本質を見ないまま踊らされてしまう人のなんと多い事か。
バンクシーはこの映画で決してMBW一人を糾弾したかったわけではなく(まあ少しは個人的感情もあるでしょうが)、アート業界にはびこるこうした姿勢自体に対して警鐘を鳴らしたかったのだろうなと。そしてそれはバンクシー自身の作品を持ち上げる人々に対してのメッセージでもあったのでしょう。「バンクシーの作品だから」という理由で彼の作品を賞賛している人は、果たして彼が作品に込めたメッセージに気づいた上で賞賛しているのでしょうか?
で、先に述べた「この映画は実話かフィクションか」という議論ですが、どっちにしろバンクシーが観客に伝えたかったメッセージというのは同じですよね。ものの本質をしっかり見ろよという。だからそこは別に気にするところじゃないと思います。
 

しかしこういう面を抜きにしても単純に映画として面白いです。バンクシーの他にもティエリーに関わってきたアーティストが多数出てきますが、MBWの成功を歯がゆく思いながらもその一端を担ってしまった事から何も言う事ができずジョークだったらいいのにね…としか言えないのがせつないです。だんだんしょんぼりしていくバンクシーもかわいいです。
あとティエリーさんがもうね、ひどいんだけど何か憎めなくてずるいと思いましたね。バンクシーとか他のアーティストに対する態度と自分の雇ったスタッフに対する態度の差がひどくて本当にだめ中間管理職そのものだし、「このポスターにオリジナリティを付けるには…」とか言いながらずらっと並べたポスターにペンキを適当にペって飛ばしたときにはおいおいえええ!?と思いましたが、それでもあの人柄こそが成功の最大の理由だったんじゃないかなと。まぬけなのか頭いいのかほんとよくわかんないです。
だって絵は欲しくないけどあのキャラはちょっと欲しいと思っちゃったし、絵は欲しくないけど体を張った芸人としてならお金払いたいくらいだもん。絵は欲しくないけど。

 

 

ついでに

上で「アート業界だけの話じゃない」と書いたように、最近の邦楽業界でも同じようなケースがあるなと感じる事が多いのでついでに書きます。私はJU○Uという歌手が好きではなくて、よく彼女のシングル名を拝借して「その歌姫面を止めてよ」とか「音楽活動を止めてよ」とかディスっているのは内緒なんですが、彼女のやり方もだいぶMBWに通じる点があるなと。
彼女はすごく我が物顔でカヴァー曲を歌うんですよね。別にカヴァーすることが悪いとは思わないです。ろくにアレンジも加えないでほぼ原曲のまま拝借している点についても100歩譲って許します。
が、それは元々存在した他の人の作品に、薄っぺらいオリジナリティ(笑)とも呼べないようなモノを載せただけのものに他ならないのに、いかにも自分がカヴァーしたことに価値があるといった姿勢でいることが一番許せないんです。それは元の作品、作者に対してものすごく失礼なことですよね。彼女のカヴァーアルバムのタイトルが「Request」であることからもそういった不遜さが伺えます。ファンが望んでいるから私が歌ってあげるの。って。笑わせんなと言いたいです。タイトルが「Respect」だったらまだ救いようがあったかもしれないですけどね。まあ彼女一人の責任でなくレコード会社の思惑等もあるのでしょうが、本当に最近の音楽シーンはこういう、「カヴァー」「サンプリング」「オマージュ」を勘違いしているようなものが蔓延りすぎていて面白くないなあと思う訳です。
 
 
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監督 : ジェームズ・ガン

出演 : レイン・ウィルソン、エレン・ペイジ、ケヴィン・ベーコン

総合評価 : ★★★★☆ 4.5/5

 
 
 

ジェームズ・ガン監督作品「スーパー!」。かなり前から気になっていた作品です。
最近流行りの「特殊能力を持たないヒーローもの」というと、どうしても「キック・アス」のイメージが強い人は多いのでは。
しかしこの「スーパー!」、キックアスとは完全にベクトルが違う作品になっているのでご注意を。
 

主人公のフランク。レイン・ウィルソン演じる冴えない男です。彼は美人の妻サラと幸せな結婚生活を過ごしていたのですが、元々ドラッグ中毒だったサラがジャンキーに出戻ってしまい、家を出てケヴィン・ベーコン演じるドラッグディーラーの元に行ってしまう。
警察に「どうにかしてくれ!」と駆け込んでみても「いや、きみ捨てられたんだよ、どうしようもないよ」と一蹴され、途方に暮れたフランクが神に祈っていると突然変な啓示のようなものをさずかります。あと変なテレビ番組に影響されたりもします。
そうして出来上がったのが真っ赤なお手製コスチュームに包まれたクリムゾン・ボルト!腹が!腹がでちゃってるよ!彼はとりあえず試しに、身近な犯罪から粛正しようと街に飛び出します。このへんまでは確かにキック・アスっぽいですね。実況して録音してるあたりもうちょっとアホっぽいですね。
 

キック・アスのレビュー記事にも書いたのですが、確かにキック・アスは面白かったし爽快感もあったんですけどあの落とし込み方はどうなのかなーって思うんです。細かい所を気にしないで楽しめばいいじゃんって作品なのかもしれないけど、どうもあのラストだけは納得いかなくて。うまく言えないけど、結局それかい!みたいな、ヒーロー映画としての新しさみたいなのは感じられなかったんですよね。なので巷の評判ほど傑作だとは思えないんです。で結論から言うと私はこの「スーパー」のほうが好きです。新しかった。
 

悪に立ち向かう方法は、言ってしまえばただの暴力です。それはヒットガールもフランクも同じです。ただ、ヒットガールは強烈で圧倒的な存在感で倫理とか道徳とかそういうものを吹き飛ばしていたんですが、フランクにはそんなものありません。いわば普通のおっさんがレンチで人殴ってるだけなんだもん。しかも相手は犯罪者といえるのか?ってレベルなんです。列に割り込みしてきた人とかね。そしてわりと映像がグロい。で、もしこれが普通の映画だったらみんな、これはちょっと…って引くと思うんですよね。
ただこの映画の怖いところって、その他のシーンが完全にコメディ調で進んでいくもんだから、観客がみんないろんなポイントで笑ってるんです。会話シーンとか本当に面白いんです。レイン・ウィルソンずるいんです。で、みんな笑っている流れで暴力シーンに入ると、そこでもみんな笑ってるんです。え、いや、ひくでしょ?そこは。みたいな。わたしはそれが一番怖かったというか、不気味だったんです。
 

で、ここからどうするんだ?って思っていると全く予想しなかった方向に進んでいくんですよ。フランクがヒーローの資料集めのために通っていたコミック屋の店員リズ(エレン・ペイジ)がクリムゾンボルトの相棒であるボルティーになるんですけど、ほんとにこの子がねー、加減を知らないというか。まあ頭おかしいんです。ヒーローおたくすぎて、現実と虚構の区別がついていないんですね。で、そんなボルティーを見てクリムゾンボルトはどん引きしてる。いわば、いつのまにかわたしたち観客と同じ立ち位置にフランクさんはいるんです。あなただって同じようなことしてたのにね。人のふり見てなんとやら、です。
 

ここからの展開はいろいろと衝撃的なので是非劇場でご覧いただきたいと思うんですが、イラストとか音楽とかもポップだしコメディっぽく進んで行くしで、気を抜いて観ているとかなりショックを受ける作品になっているのでご注意を。オープニングから割とアレですしね…。コメディの皮をかぶりながらも色々な事を考えさせられる作品です。悪に対する暴力ならば許されるのか?とか、クリムゾンボルトの事がテレビで取り上げられた時最初はみんな気味悪がってたくせに、彼の暴力の対象となった人が犯罪者だったとわかった途端に反応を変える人々…それってどうなの?とかね。でもエレン・ペイジが本当にぶっ飛んでて面白いのでそれだけでも見る価値ありだと思いますけどね。
ヒーローものが好きな人、「キック・アス」を観て何かが腑に落ちなかった人には特におすすめしたいです。

 

 

ほか。
ベーコンさんまじベーコンさん。X−MEN厨な最近のわたしは完全にセバスチャン・ショウのイメージがついちゃってたんですが、今回は良い意味ですごい適当でよかったですねー。この人もまともじゃないんだけどボルティーのアレさと比べるとそんなにおかしな人でもないように思えるから怖いね…。それくらいエレン・ペイジぶっとんでましたね…。
・そんな中で一番のお気に入りキャラはアンドレ・ロヨ演じるフランクの同僚の黒人さんです。役名わすれた。マシンガンのように中身の無いことをしゃべります。ヘイメーン!とか言います。いいキャラなのでもっと出番を増やしてあげて欲しかったのですが、増やした所で中身がないことしか言わないから別にいいのか。
・タイラーさんはあんまり口が目立ってなくてよかったんじゃないかな。ごめんなさい印象うすくて…。
・どこがとは言わないけど、キックアスよりエンジェル・ウォーズに近いものを感じたりもしたよ。

 
 
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監督 : カラン・ジョーハル

出演 : シャー・ルク・カーン、カージョル、ジェニファー・エコルズ

総合評価 : ★★★★☆ 4.5/5

 

 

 
これは思わぬ拾い物です。
インド映画なんですが、私が思い描いていたインド映画のイメージとは全くかけ離れた映画。
インタビューで「ボリウッド映画」と揶揄されるインド映画のイメージを打ち壊したい、と語っていた監督の狙いは大成功と言っていいのではないでしょうか。だからこそインド映画に抵抗を感じている人にこそ観て頂きたいような、素晴らしい傑作です。

 
主人公はインド人のリズワン・ハーンという男性。彼は軽度の自閉症(アスペルガー症候群)を煩っています。大きい音や黄色が苦手だったり、自分の感情を表に出す事や相手の感情を読み取ることができなかったりする。だから、言われた言葉を(それが嫌味であったとしても)文面通りに受け取ってしまいます。
物語は、そんなハーンが旅に出るところから始まります。旅の目的はアメリカ大統領に会って、ある言葉を伝える事。
そして、彼が何故そんな旅に出るようになったのかという過程を織りまぜながら進んで行きます。

 
160分という本編時間に一瞬観る事を躊躇してしまいますが、全くその長さを感じさせないほどに脚本がよくできています。
そして物語だけでなく映像の編集の仕方も上手いなと何度も感じました。時系列が行ったり来たりしながら進んで行くんですが、その切り替わり方が逐一気が利いていて素敵です。全体的に映画としての完成度が高いので見ごたえがあります。

 
物語の中で鍵となるのが、宗教の違い。そしてあの「9.11事件」です。
インド人には多数派のヒンドゥー教徒と少数派のイスラム教徒がおり、主人公のリズワンとその家族はイスラム教徒です。「ハーン」という名字がムスリム名=イスラム教徒であることを表しているらしいので、家系的にそうなのかな。
そして母親が亡くなり、アメリカに渡っていた弟を頼りに渡米したリズワンが出会って恋に落ちる女性マンディラ。彼女はリズワンと同じインド人ですが、ヒンドゥー教徒です。
インドにおいてイスラムとヒンドゥーの間ではずっと争いが絶えず、リズワンの弟は「ヒンドゥーの女なんかと結婚するなら家を出て行け!」とリズワンに告げます。
リズワンは信教の違いなんて気にしていない。なぜならそう母に教えられたから…。マンディラと結ばれたリズワンでしたが、9.11事件が起きた事で彼が手にした幸せな生活は崩れさってしまう。
テロ事件以降、アメリカに住んでいるイスラム教徒は迫害を受けるようになります。「ハーン」という名字だけでその対象になってしまう…。つまり彼だけでなく、マンディラや連れ子であるサミールもです。ここで彼が旅に出る理由が明らかにされます。

 
少し脱線しますが、リズワンが旅の道中で立ち寄ったイスラムのムスク。そこでイスラム過激派の男達が話していた内容、どうも聞き覚えがあったんです。
コーランに書かれているという、「イブラヒムが息子のイスマエルを捧げものとして神に供える」という話。これ、キリスト教の旧約聖書に全く同じお話があるんです。
ただ、旧約聖書では捧げられたアブラハム(=イブラヒム)の息子はイサクという名で、イスマエルはイサクが生まれた後にアブラハムによって追放されているんです。そしてそのイスマエルからの系列がやがてアラブ人になったとされ、アラブ人が開いたイスラム教ではイサクよりもイスマエルの方が重視されている。
このように、息子の名前以外は全く同じ内容の話がキリスト教とイスラム教それぞれの聖典に記されている…。宗教の違いって、一体何なのでしょうか。それだけで争ったり、迫害したりすることが一体何を生むというのでしょうか。

 
人それぞれ信じる神があるのはいいと思うんです。ある特定の宗教がいけないとか、そういうことは思わない。リズワンだって祈りを欠かさない敬虔なイスラム教徒です。
ただ彼の人生の軸となっているのは、紛れも無く母の教えであり、愛と慈愛が何よりも大切だというぶれのない信条を持っている。
一番怖いのは、自分自身をしっかりと持っていないようなひとが、どう生きていけばいいのかわからずに宗教に縋ってしまうことだと思います。それはきっと正しい信仰のありかたではないんです。

 
日本人は宗教との結びつきがあまり強くないから、共感はし難いかもしれません。でも、知ることは決して悪い事ではないと思います。色々と気づかされる映画でしたが、リズワンの母の「この世の人は2種類に分けられるの。いい事をするいい人と、悪い事をする悪い人にね」という言葉が特に印象的でした。当然この物語はフィクションですが、画面の中のリズワンの生き様に拍手を送りたくなり、最後の方は涙が止まりませんでした。本当にもっとたくさんの人に観て欲しい。おすすめです。

 
 
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監督 : ジョン・ラセター

出演(声) : ラリー・ザ・ケイブル・ガイ、オーウェン・ウィルソン、ボニー・ハント

総合評価 : ★★★☆ 3.5/5

 

 

 
ディズニー/ピクサーの25周年記念作品でもあるこの夏の新作「カーズ2」。
あのライトニングとメーターが、東京、パリ、イタリア、ロンドンと世界を股に掛けるスケールの大きなアクションムービーに仕上がっています。
まずは良かったところ。言うまでもなく、CGのクオリティは素晴らしいです。各キャラクター(車)たちの質感や反射の表現はもちろん、背景も実写と見紛う美しさ。特にイタリアは美しかった!カーチェイスのシーンも迫力満点で、もうピクサーに不可能はないのかと思わされる仕上がりです。
脚本も良かった。マックイーンが世界グランプリに挑んでいる中で、メーターは今作の新キャラクターであるフィン・マックミサイルたちと奔走します。今作の主役はメーターですね。謎解き的な要素もあって、最後まで非常によくできていたと思います。
 
 
さて、ここからはちょっと話が逸れますが、”「カーズ2」が「カーズ」「トイストーリー3」になれなかった理由”というのを書いてみます。
カーズ2、確かによくできてます。面白くはあるんです。ただ、名作にはなりきれていない。
ピクサー作品が魅力的なのは、キャラクターが魅力的だから。それ自体は間違いではないと思います。子供たちはまずキャラクターに惹かれます。では、大人にとっても魅力的なキャラクターとは何でしょうか。
「トイストーリー3」と、前作である「カーズ」。私がピクサー作品の中で最も愛しているこれらの2本に共通していること。語弊があるかもしれませんが、それはあれだけ魅力的なキャラクターたち(おもちゃたち、車たち)が実は本当の主役ではないというところです。
子供たちは確かにおもちゃたちの大冒険やマックイーンの成長物語、迫力と感動のレースシーンに胸を弾ませるでしょう。ですが、大人たちは彼らがある種の「代弁者」であることに気付くのです。
作品に隠されているテーマ、すなわち本当の主役とは?トイストーリー3ではもちろん成長したアンディ。そしてカーズにおいてはラジエーター・スプリングスという町です。そしてそれらに込められたメッセージというのは、現代に生きる誰もが共感するきわめて普遍的なものです。
ラストシーンがまるまるこのメインの部分にあてはまるトイストーリー3と比べると、カーズの方は舞台もアメリカということもあり少し共感し辛いかもしれませんが、マックイーンが迷い込んだルート66=自分の人生と置き換えて考えてみるとわかりやすいと思います。 特にカーズに関しては時代とライフスタイルの移り変わりを表していることもあり、本当によくできているなあと感心するばかりです。
そしてそこにはキャラクターがそれぞれおもちゃ・車でなければならない「必然性」が確かに存在しているのです。
 
 
さて話を戻しますと、今作ではその裏のテーマの部分がごっそりと抜けてしまっているように思えるのです。
即ちキャラクターたちの間にあるドラマだけで完結してしまっている(=キャラクターが車でなければならない必然性もまた失われている)。今までのピクサー作品の中でもそういった作品はありました。言ってしまえばトイストーリー2もこれに近いです。
なので、これはこれで続編の方向性としては間違ってはいないのですが、それでは先に挙げた2本には届かないんです。トイストーリーシリーズでは、このような現象に更に陥ってしまいがちである3作目であれほどの名作を作り出してくれたピクサー。だからこそ求めるレベルも高くなってしまうのですが、残念ながら去年と同じような感動を得るには至らなかったな、という印象です。
たらればになりますが、今作の中でメーターが「ペッパー」と呼んでいた忘れられたオールドカーたち。彼らについてもっと深く掘り下げた描写があったなら、作品のクオリティは全く変わってきたのではないでしょうか?この部分をただのヒール集団としてサラリと流してしまっていたのは非常に惜しいなあと思うのです。
 
 
総合的に見て決して作品のクオリティは低くないんです。むしろトレーラーや米国での評価からは全く期待できなかったので、普通に楽しめる出来になっていたのにはホッとしたくらい…。笑 ルイジやグイドも相変わらず可愛いし、新キャラクターもみんな個性的で好きなんですが、あまりにも前作、そして比較対象になりやすい去年の作品が良すぎたなあと。そして私が前作を好きすぎるのがいけない。好きすぎて続編でるよ!って聞いた時はラセターさんに三日三晩感謝の祈りを捧げ続けたくらいなんだから、作ってくれただけでありがたいと思わなきゃいけないよね…。
 
 
 
ほか。
・ライトニングさんがイケメンすぎて困るよ。何大人になっちゃってんのさ。あと吹き替えで見たんだけど私は土屋さんの声が好きすぎるよ。
・ライトニングさんとメーターはいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃしすぎだよね…。
・と思ったらメーターが「この傷はマックイーンにつけられたものだからずっと消さないでおきたい」的なことを言い出したので頭痛がしたよね…。
・アニメでほんとうによかった。実写だったらおそらくダークサイドに堕ちていた。
・新キャラのフィン・マックミサイルの声はマイケル・ケインがやっているらしい。とゆわけで字幕版も観たいのです。
・べつに3Dじゃなくてもよかった。
・序盤「ガソリンに代わる代替燃料」みたいな単語が出てきたのでてっきりエコ問題とかに発展するのかなあと思ったら全然しなかった。これはよかった。そういう説教くさいのはピクサーに似合わないので。
・ルイジとグイドかわいい。
・ルイジとグイドかわいい。次はルイジとグイドのスピンオフを撮ればいいんじゃないかなあ?同時上映のショートストーリーでいいからさ。ね。グイドは今回もアフロをかぶっていたりして可愛らしい。地元イタリアではしゃぐ姿がかわいい。ルイジのせいで最近ジローラモすら可愛く思えてきた責任は取って欲しいところである。
・同時上映のトイストーリー・トゥーンはすごくよかった。というかあれはケンがなあ。あいつずるいよなあ。

 
 
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