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[Review]マイ・ネーム・イズ・ハーン(My name is Khan)

Posted on: 03/08/2011

 

監督 : カラン・ジョーハル

出演 : シャー・ルク・カーン、カージョル、ジェニファー・エコルズ

総合評価 : ★★★★☆ 4.5/5

 

 

 
これは思わぬ拾い物です。
インド映画なんですが、私が思い描いていたインド映画のイメージとは全くかけ離れた映画。
インタビューで「ボリウッド映画」と揶揄されるインド映画のイメージを打ち壊したい、と語っていた監督の狙いは大成功と言っていいのではないでしょうか。だからこそインド映画に抵抗を感じている人にこそ観て頂きたいような、素晴らしい傑作です。

 
主人公はインド人のリズワン・ハーンという男性。彼は軽度の自閉症(アスペルガー症候群)を煩っています。大きい音や黄色が苦手だったり、自分の感情を表に出す事や相手の感情を読み取ることができなかったりする。だから、言われた言葉を(それが嫌味であったとしても)文面通りに受け取ってしまいます。
物語は、そんなハーンが旅に出るところから始まります。旅の目的はアメリカ大統領に会って、ある言葉を伝える事。
そして、彼が何故そんな旅に出るようになったのかという過程を織りまぜながら進んで行きます。

 
160分という本編時間に一瞬観る事を躊躇してしまいますが、全くその長さを感じさせないほどに脚本がよくできています。
そして物語だけでなく映像の編集の仕方も上手いなと何度も感じました。時系列が行ったり来たりしながら進んで行くんですが、その切り替わり方が逐一気が利いていて素敵です。全体的に映画としての完成度が高いので見ごたえがあります。

 
物語の中で鍵となるのが、宗教の違い。そしてあの「9.11事件」です。
インド人には多数派のヒンドゥー教徒と少数派のイスラム教徒がおり、主人公のリズワンとその家族はイスラム教徒です。「ハーン」という名字がムスリム名=イスラム教徒であることを表しているらしいので、家系的にそうなのかな。
そして母親が亡くなり、アメリカに渡っていた弟を頼りに渡米したリズワンが出会って恋に落ちる女性マンディラ。彼女はリズワンと同じインド人ですが、ヒンドゥー教徒です。
インドにおいてイスラムとヒンドゥーの間ではずっと争いが絶えず、リズワンの弟は「ヒンドゥーの女なんかと結婚するなら家を出て行け!」とリズワンに告げます。
リズワンは信教の違いなんて気にしていない。なぜならそう母に教えられたから…。マンディラと結ばれたリズワンでしたが、9.11事件が起きた事で彼が手にした幸せな生活は崩れさってしまう。
テロ事件以降、アメリカに住んでいるイスラム教徒は迫害を受けるようになります。「ハーン」という名字だけでその対象になってしまう…。つまり彼だけでなく、マンディラや連れ子であるサミールもです。ここで彼が旅に出る理由が明らかにされます。

 
少し脱線しますが、リズワンが旅の道中で立ち寄ったイスラムのムスク。そこでイスラム過激派の男達が話していた内容、どうも聞き覚えがあったんです。
コーランに書かれているという、「イブラヒムが息子のイスマエルを捧げものとして神に供える」という話。これ、キリスト教の旧約聖書に全く同じお話があるんです。
ただ、旧約聖書では捧げられたアブラハム(=イブラヒム)の息子はイサクという名で、イスマエルはイサクが生まれた後にアブラハムによって追放されているんです。そしてそのイスマエルからの系列がやがてアラブ人になったとされ、アラブ人が開いたイスラム教ではイサクよりもイスマエルの方が重視されている。
このように、息子の名前以外は全く同じ内容の話がキリスト教とイスラム教それぞれの聖典に記されている…。宗教の違いって、一体何なのでしょうか。それだけで争ったり、迫害したりすることが一体何を生むというのでしょうか。

 
人それぞれ信じる神があるのはいいと思うんです。ある特定の宗教がいけないとか、そういうことは思わない。リズワンだって祈りを欠かさない敬虔なイスラム教徒です。
ただ彼の人生の軸となっているのは、紛れも無く母の教えであり、愛と慈愛が何よりも大切だというぶれのない信条を持っている。
一番怖いのは、自分自身をしっかりと持っていないようなひとが、どう生きていけばいいのかわからずに宗教に縋ってしまうことだと思います。それはきっと正しい信仰のありかたではないんです。

 
日本人は宗教との結びつきがあまり強くないから、共感はし難いかもしれません。でも、知ることは決して悪い事ではないと思います。色々と気づかされる映画でしたが、リズワンの母の「この世の人は2種類に分けられるの。いい事をするいい人と、悪い事をする悪い人にね」という言葉が特に印象的でした。当然この物語はフィクションですが、画面の中のリズワンの生き様に拍手を送りたくなり、最後の方は涙が止まりませんでした。本当にもっとたくさんの人に観て欲しい。おすすめです。

 
 
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コメント / トラックバック2件 to "[Review]マイ・ネーム・イズ・ハーン(My name is Khan)"

はじめまして。

この映画のポスターだけ持っています。
映画はまだ観ていないのですが、インド・フェスティバルでこのDVDを見つけたら買うかも。SRKの映画が好きなんです。

レイラさんはじめまして、コメントありがとうございます。
SRKについてはこの作品で初めて知ったのですが、素敵な俳優ですね。他の作品も観てみたくなりました。
他の作品とはだいぶ温度差があるかもしれませんが、本当に良い映画だったので是非機会があれば観ていただきたいと思います。

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